「Output Your Ideas!~アイデアをカタチにせよ!~ 」KTX株式会社 野田太一社長<第1回>

“山を登る方法”はいくつもある。柔軟な思考が道を拓く

自社の事業に固執せず、身近なことに興味を持つ

自社で開発した「ポーラス電鋳®」で国内外の自動車メーカー・自動車部品メーカーを取引先に持つ「KTX株式会社」。1965年に仏具の製造会社として創業して以来、半世紀にわたり電気鋳造の分野で技術開発に明け暮れてきた。
その結果、2004年には「ものづくりブランドNAGOYA」の顕彰を、翌年には「第1回ものづくり日本大賞」で特別賞を受賞するなど年々評価を重ね続け、現在に至るまでその功績は枚挙にいとまがない。

 一方で、数年前から新規事業として、柔軟な発想をもとにいくつもの革新的な製品を世に送り出す「じゃない方事業」を立ち上げている。
ユニークかつ明快な名前のこの事業部では、一体日々なにが行われているのか。

蓄光製品や止水板、デジタルサイネージなど、『じゃない方事業部』の事業は多岐にわたります。事業立ち上げ2年目にして売り上げ目標を大幅に超えるなど、軌道に乗り始めていますね。あえて自社の電気鋳造技術にこだわらず、身近で気になったことや地域に必要とされていることに、まずは興味を持ち始めることから始めています

 代表の野田太一氏はそう語る。かつて陸上自衛隊に所属していた野田氏は、90式戦車の乗員を経験。自身の怪我をきっかけに退職するも、その後は奈良県立医科大学に進学し、医学の道を歩むという一風変わった経歴の持ち主だ。
形成外科医として奈良県立医科大学附属病院で勤務後、2014年には同社の社長に就任。自社技術の向上にさらなる磨きをかけつつも、「じゃない方事業部」においてさまざまな製品をプロデュースし、新たな柱を確立した。
また製品開発だけにとどまらず、毎日行われていた朝礼を廃止し、土曜日を休日にするなど、社内改革も実施。活性化していない時間を減らすことで出勤日に濃縮して働くことができ、生産能力が向上。
同時に機械化も進めたことで社員が働きやすい職場になり、モチベーションも上がった。土日休みをうたえるようになったため採用活動もしやすくなったという。

 さらに、医師免許と博士号を取得している野田氏の知見を活かし、社の休日には社内の一部を「KTX株式会社診療所」としてワクチン接種やPCR検査ができるようにしたというから驚きだ。
もちろん、接種を行うのは野田“先生”である。

KTX株式会社代表・野田太一氏。陸上自衛隊、形成外科医を経て2014年同社社長に就任。
勤務体制の改革を発端に、新規事業部「じゃない方事業部」を立ち上げる。

社内には、ワクチンを保存する冷蔵庫用に非常電源が2台用意されているだけでなく、体調不良を訴えた人のためのストレッチャーなども完備。
これについても「世の中に求められていることを始めただけ」であると野田氏は控えめであるが、身近な問題を自分事として捉えることの重要さに、改めて気付かされる。

第2回>へ続く

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