新規事業を立ち上げる際、市場の競争環境を理解することは必要不可欠です。
この記事では、新規事業者が必ず直面する「競合調査」の重要性と基本について解説します。
※本記事ではSWOT分析について記述がございます。
SWOT分析のテンプレートもあわせてご覧ください。
競合調査とは
「競合調査」とは、市場における競合他社の動向を把握し、自社のビジネス戦略を練るためのプロセスです。競合調査は市場のニーズやトレンドを理解するうえで不可欠です。効果的な競合調査を行うことで、自社の強みを最大限に活かし、市場での差別化を図ることが可能になります。
競合調査には以下のプロセスがあります。
- 市場調査
- 競合他社の特定
- 製品やサービスの分析
- マーケティング戦略の評価
- SWOT分析
また、競合調査は単に競合他社の動向を追うだけでなく、自社のポジショニングや戦略を継続的に調整する上での基盤となります。市場の変化に迅速に対応し、ビジネスチャンスを最大化するためには、継続的な市場分析と競合調査が必要です。
この記事を読むと、競合調査の基本から応用までを網羅的に学ぶことができます。
競合分析の基本とステップ
以下に、競合分析を行う際の主要なステップを紹介します。
1.競合他社の特定
競合分析の最初のステップは、市場内の主要な競合他社を特定することです。
▼活用できる情報源
・業界レポート
・市場調査
・ソーシャルメディア分析
・顧客のフィードバック
これらを通じて、市場に存在する競合他社を把握します。
特定した競合他社には、直接の競合だけでなく、間接的な競合や将来的な競合も考慮することが重要です。
以下に具体的な進め方を記載します。
①業界分析
業界団体や市場調査会社から提供されるレポートを活用して、業界の主要プレイヤーと市場のトレンドを理解します。
▼主要な業界レポート
- 日経業界分析レポート
日本経済新聞の記者が業界情報を網羅的に分かりやすく解説し、市場シェアや競争状況などを提供します。 - SPEEDA
様々な市場データや業界レポートを格納したクラウドサービスで、情報収集の効率化と企業の進化を支援するプラットフォームです。 - SMBCコンサルティング
注目すべき市場の最新業界レポートを提供し、(株)矢野経済研究所、(株)富士経済、(株)三井住友銀行、(株)日本総合研究所などのレポートへのアクセスを提供します
業界に関連するニュース、ブログ、専門誌を読むことで、新たに登場する競合や業界の動きを追跡します。
▼主要な業界レポート
- 日本経済新聞 (Nikkei)
日本の経済やビジネスに関する最新のニュース、分析、レポートを提供しており、多くのビジネスプロフェッショナルや意思決定者に利用されています。 - 毎日新聞 (Mainichi Shimbun)
日本国内外の政治、経済、文化など幅広い分野のニュースをカバーしており、ビジネスに関連する重要な情報源です。 - 朝日新聞 (Asahi Shimbun)
国内外のニュースを広範に報じており、特に経済関連のニュースや業界動向についての記事が充実しています。 - 産経新聞 (Sankei Shimbun)
経済、政治、国際関係のニュースに強みを持ち、ビジネスリーダーや専門家によく読まれています。 - 日経ビジネス (Nikkei Business)
ビジネスと経済に特化した週刊誌で、業界のトレンド、企業の戦略、市場分析などの深い洞察を提供しています。
インタビューやアンケート等で、顧客に直接話を聞き、彼らがどの競合製品やサービスを利用するかヒアリングする。
AmazonやGoogleレビュー、価格.comなどで、顧客がどのようなレビューと評価をしているかを分析します。
X,instagram,TikTok,Facebook,LinkedInなどのSNSで業界に関連するキーワードやハッシュタグを監視し、どの企業が言及されているかを調べます。
また、Reddit, Quoraなどの業界関連フォーラムでの議論を追跡し、言及されている企業をリストアップすることも有効な手段の1つです。
競合のウェブサイトを見て、提供している製品やサービス、価格、USP(独自の販売提案)を分析します。
また、可能であれば競合の製品やサービスのデモンストレーションを受けたり、無料トライアルを直接体験して、その特徴や強みを理解することは大変貴重な情報源となります。
SEOツールを使って、競合のウェブサイトのトラフィックやキーワード戦略を分析します(後述します)。
競合サイトがウェブ上での集客に利用しているキーワードは参入する業界における顧客インサイトである場合が多く、自社サービスのコンテンツやサイト制作のヒントになります。
2.製品・サービスの比較
次に、競合他社の製品やサービスを詳細に比較します。
▼競合他社と比較すること
・価格設定
・品質
・機能性
・顧客サービス
これらを競合他社と比較して強みと弱みを理解します。
この分析を通じて、自社の製品やサービスが市場ニーズにどのように応えるべきか、
また、どのように競合と差別化できるかを検討します。
3.マーケティング戦略の分析
競合他社のマーケティング戦略を理解することも重要です。
▼競合他社と比較するもの
・広告
・SNSの活用
・プロモーション戦略
これらを分析し、競合他社がどのように顧客を引き付けているのか、市場での存在感を高めているのかを
理解することで、自社のマーケティング戦略を改善するためのヒントを得ることができます。
広告やSNS活用、プロモーション戦略において、どの媒体で実施するのか媒体は競合他社が狙うターゲット層と大きく関わります。以下にSNSでを活用した戦略を行う際の媒体選定基準の一例を記載します。
- Instagram:写真や映像を中心としたコミュニケーションが盛ん
主に若いユーザー層に集中しており、特に18歳から29歳の間のユーザーが中心です。 - TikTok:映像を中心としたコミュニケーションが盛ん
非常に若いユーザー層に人気があり、特に10代から20代前半のユーザーが中心です。 - X(旧:Twitter):テキストを中心としたコミュニケーションが盛ん
比較的広範ですが、特に18歳から29歳の若い世代に人気があります。また、30代から40代のユーザーも多く、幅広い年代に利用されています。 - Facebook:テキストを中心としたコミュニケーションが盛ん
Facebookは幅広い年齢層に使用されており、特に30代以上のユーザーが中心です。
また、使われているキーワードやビジュアルもターゲット分析に大いに役立ちますので、比較項目の中に含めることをおすすめします。
4.市場の地位とパフォーマンスの評価
競合他社の市場での地位とパフォーマンスを評価します
▼評価すること
・市場シェア
・販売成績
・顧客基盤の成長
・ブランドの認知度
などを分析することが含まれます。この情報を通じて、競合他社が市場内でどのような地位を占めているか、また自社がそれにどのように対応すべきかを理解することができます。
以下に調査方法を記述します。
専門の市場調査会社が発行する業界レポートには、特定の市場や業界における主要プレイヤーの市場シェアが記載されていることが多いです。
▼公開財務情報:
競合他社が上場している場合、四半期ごとの収益報告や年次報告書に市場シェアに関連する情報が含まれます。
▼公開財務情報
上場企業の場合、財務報告書に製品ごとの販売成績や売上高が記載されています。
▼ニュース記事やプレスリリース
新製品の発売や重要なマイルストーンに関連する情報は、企業のプレスリリースや業界ニュースで報じられます。
▼ソーシャルメディア分析
ソーシャルメディア上でのフォロワー数の増加やエンゲージメントの変化を分析することで、顧客基盤の成長を推測できます。
▼顧客レビューとフィードバック
オンラインレビュープラットフォームやフィードバックサイトを分析し、顧客基盤の成長や変化を理解します。
▼ブランド調査
専門の調査会社が行うブランド調査を利用し、特定のブランドに対する認知度や好感度を把握します。
▼オンライン検索トレンド
Google Trendsなどのツールを使用して、特定のブランドや製品に対する検索トレンドを分析し、認知度の変化を把握します。
▼ソーシャルリスニングツール
ソーシャルメディアやオンラインフォーラムでのブランドに関する言及を監視し、ブランドの認知度や評判を分析します。
これらの方法を組み合わせて使用することで、競合他社の市場での地位やパフォーマンスに関する包括的な理解を得ることが可能です。また、これらのデータを自社のパフォーマンスと比較分析することで、競争上の優位性や改善点を特定することができます。
5.SWOT分析の実施
競合分析の結果を基に、自社の強み、弱み、機会、脅威を分析するSWOT分析を実施します。
これにより、競合との比較で見えてくる自社の競争上の優位性や改善点を明確にすることができます。
SWOT分析のテンプレートはこちら
6.戦略の更新と調整
最後に、得られた情報をもとにビジネス戦略を更新し市場の変化に適応します。
競合分析は一度きりの活動ではなく、市場の動向に応じて定期的に行う必要があります。
これらのステップを通じて、新規事業者は競合との差別化を図り、市場ニーズに応えることができるようになります。競合分析は、ビジネスの成長と発展に不可欠なプロセスであり、市場で成功するための重要なステップです。
競合調査に役立つツール
以下では、競合調査に役立つ主要なオンラインツールとリソースについて紹介します。
これらのツールは市場の動向、競合他社の戦略、業界のトレンドなどを把握する情報源なので、是非活用してみてください。
- Google Analytics
Google Analyticsは、ウェブサイトのトラフィックとユーザー行動を分析するための最も主流なツールです。このツールを使用することでウェブサイトにどのような顧客が訪れているのか、何人訪れているのか、どのコンテンツに人気があるのか、どのくらいの時間見てもらえているのか、どのコンテンツでページに飽きられているのか等を把握できます。 - SEMrush
SEMrushは、SEOと競合他社のオンラインマーケティング活動を分析するための包括的なツールです。キーワードリサーチ、バックリンク分析、競合他社の広告戦略の分析など、多様な機能を提供します。これにより、競合他社のオンラインプレゼンスの強さと戦略を理解することが可能です。 - Ahrefs
Ahrefsは、競合他社のウェブサイトのバックリンクとSEOパフォーマンスを分析するための優れたツールです。このツールを利用することで、競合他社がどのウェブサイトからリンクを得ているか、どのキーワードでランク付けされているかなどの詳細情報を得ることができます。 - BuzzSumo
BuzzSumoは、ソーシャルメディア上でのコンテンツのパフォーマンスを分析するためのツールです。どのコンテンツが最も共有されているか、特定のトピックやキーワードに関連するトレンドなどを把握するのに役立ちます。これにより、競合他社のソーシャルメディア戦略を評価し、自社の戦略を強化するための気づきに繋がります。 - Crunchbase
Crunchbaseは、ビジネス情報、業界動向、スタートアップや投資に関するデータを提供するプラットフォームです。競合他社の資金調達状況、M&Aの情報、業界のトップ企業などのデータを把握するのに適しています。 - SurveyMonkey
市場調査や顧客フィードバックの収集にはSurveyMonkeyのような調査ツールが有効です。これを利用することで、ターゲット市場のニーズや嗜好、競合他社に対する顧客の意見などを直接的に収集することが可能です。
競合調査を成功させるポイント
競合調査を成功させるための重要なポイントをいくつか記載します。
これらは新規事業を市場で成長させるために欠かせないものです。
- 継続的な市場分析の重要性
競合調査は一度きりの活動ではありません。市場は常に変化しており、新たな競合が現れる可能性があります。そのため、市場の動向や競合他社の戦略を定期的に分析し、自社のビジネス戦略を適宜更新することが重要です。継続的な市場分析により、変化する市場環境に迅速に対応し、競争上の優位性を維持することができます。 - データドリブンのアプローチ
競合調査では、客観的・定量的なデータに基づいた分析を行うことが重要です。
・市場調査データ
・顧客のフィードバック
・業界レポート
など、信頼できる情報源からのデータを活用することで、実用的な気づきを得ることができます。データドリブンなアプローチは、より効果的な意思決定に繋がります。 - フレキシブルな戦略の採用
市場の変化に迅速に対応するためには、フレキシブルな戦略が必要です。競合調査の結果に基づき、
・製品開発
・マーケティング戦略
・顧客サービスのアプローチ
などを柔軟に調整することが重要です。市場のニーズやトレンドに合わせて戦略を変更することで、成長を加速させることができます。 - デジタルツールの活用
競合調査においては、Google Analytics、SEMrush、Ahrefsなどのデジタルツールの活用が非常に効果的です。これらのツールを使用することで、競合他社のオンラインプレゼンスやマーケティング戦略をより深く理解し、自社の戦略を強化することができます。 - カスタマー・セントリックなアプローチ
競合他社よりも優れた顧客体験を提供することは、市場での成功に不可欠です。顧客のニーズと期待を理解し、それに基づいた製品開発やサービス提供を行うことで、顧客ロイヤルティとブランドの評価を高めることができます。 - 学び続ける姿勢
市場の動向や技術の進展は絶えず変化しています。競合調査とビジネス戦略に関する最新のトレンドを学び続けることは、長期的な成功にとって重要です。業界イベント、セミナー、オンラインコースなどを通じて知識を更新し続けることが重要です。
これらのアドバイスを実践することで、新規事業は市場での競争において優位な位置を確立し、持続的な成長に繋がります。
まとめ
本記事では、新規事業の成功のために不可欠な「競合調査」の重要性とその実施方法について解説しました。
競合調査は、新規事業が市場で成功するための重要なステップです。
市場の理解を深め、競合他社に対する独自のアプローチを見つけ出すことで、ビジネスは繁栄の道を歩むことができます。
この記事を通じて、自社の新規事業の戦略を強化するための実践的なアプローチの気づきになれば幸いです。